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専門家コラム

洗い替えは気をつけましょう

2012-07-27 テーマ: 人事

 

給与・賞与制度には、「積み上げ・積み下げ」方式と、「洗い替え」方式がある。

基本的には、月例給に関する部分は「積み上げ・積み下げ」方式を使い、賞与については「洗い替え」方式を使う。

積み上げ・積み下げ方式に関しては、「これまでの給与額に対して、上げるか、下げるか」を決めるもので、30万円の給与の人であれば、それを基準として上げ下げをしていくという方式になる。

洗い替え方式は、「これまでの支給額は考えない」で、都度支給額を決める方式で、賞与であれば、前年にいくら払ったかは考慮しない(運用面では実際そうではないことが多い)で、評価に基づくなどして決定する。

で、どちらもそれなりに有効なものではあるが、気を付けていただくことは、「月例給に洗い替えを入れると、運用できなくなる」ということだ。

よくあるのは、月例給の中に「成果給」などとして、評価に基づいた給与額を設定するとしたときに(基本的には年俸制というやつは、月例給全体が洗い替えということではある)、標準評価が「A」で、「SS」「S」「A」「B」「C」の場合、Sだといくら、Aだといくら、と決めて支給するものだ。

これを絶対額としてしておくと、去年SSだったから7万円の支給だったが、今年はSだから5万円・・・などとなり、標準以上の評価なのに、「成果給」が下がってしまう。つまり月例給が下げることにもなる。

一時金として支給している賞与ならばありだが、月例給がこのように変化してしまうと、「標準以上の評価をとっているのに給与が下がる」ということになり、高い評価を得てもモチベーションが逆に下がってしまうことになる。

考えてみていただきたい。もし月例給が1000円下がったら、みなさんモチベーションどうなりますか?年間1万2000円。会社としてのコストとしての削減額としてはとても少ないが、本人にとっては、どうだろう、12万円ぐらいかそれ以上のモチベーションダウンになるんじゃないだろうか。
下がる金額が100円だとしても、会社の損失は年間1200円では済まないと思う。

なので、月例給においての洗い替え方式の導入は、「後のことを考えたら絶対にお勧めしない」施策なのだ。

標準評価ならば昇給か、あっても据え置きだろう。標準評価未満ならば下がることはやむを得ないかもしれない。

「給与が下がらない仕組み」がいいというものではない。そういう仕掛けはこれからの世の中、しっかりと整備していくべきだ。だけど、どういうときに下げるのかを慎重に考えておかないと、失敗する。
年俸制をやめる会社が多いが、それはそういうことに気付いたから、とも言えると思う。

制度を入れる・変えるときには、後のこと、運用面をよーく考えて行っていただきたいと思う。

フォー・ノーツ株式会社 代表取締役社長
人事で大切なことは、各論よりもまず全体像。全体が見えてこそ、効果のある人事施策が展開できます。
上場企業人事部長経験者でなければ知りえないさまざまな実体験を元に、企業の人事機能づくりから、制度構築・運用、採用基準策定と定着対策、教育体系づくり、労務管理・規程整備に至るまで、社員の成長を高めるための人事全般のアドバイスを行っています。

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