
各主要市場における実質的支配者開示・コンプライアンス対応
主要市場においては、実質的支配者(UBO: Ultimate Beneficial Owner)に関する規制により、企業や法人の背後にいる実質的な所有者や支配者の情報開示が義務付けられています。これらの規制は任意ではなく、法的拘束力を持つものであり、交渉の余地もありません。また、規制の内容は複雑であることが多く、専門的な対応が求められます。
期限の遅れや不正確な提出などによりコンプライアンスに違反した場合、重大な結果を招く可能性があります。これには、高額な日額罰金、事業ライセンスの停止、法人銀行口座の凍結などが含まれ、事実上、事業の継続が不可能になるおそれもあります。
UBOとは?なぜ重要なのか?
UBOとは「Ultimate Beneficial Owner(実質的支配者)」の略で、企業の背後にいる実在の人物のことを指します。国際的なマネーロンダリングおよびテロ資金供与対策を担うFATF(金融活動作業部会)によると、UBOとは、直接的または間接的に企業を所有・支配する自然人のことです。
ここで重要なのは、UBOは常に実在する人物であるということです。シェルカンパニーでも、持株会社でもありません。個人なのです。
これは、規制当局が透明性を求めているからです。
- 誰が利益を得ているのか?
- 誰が意思決定をしているのか?
- 問題が起きたとき、誰が責任を負うのか?
UBOの基準や支配構造は国によって異なる
「実質的支配者」の定義は、各国によってわずかに異なります。多くの国では10~25%の所有比率が基準とされていますが、支配権は株式の保有だけで判断されるわけではありません。影響力も基準になり得ます。たとえば、取締役の任命権や取締役会の意思決定に対する影響などです。
以下のようなケースが該当することがあります。
- 直接的支配:議決権の25%を保有している
- 間接的支配:親会社を通じて所有している
- 実質的支配:戦略的意思決定や利益配分に対する権限を持つ
「実質的支配」は、所有構造が不透明な家族経営企業や非公開企業において特に重要となります。例えば、Liebherr(リープヘル)のような企業では、ファミリーオフィスが実質的に支配しており、公式に公開された株式や議決権は存在しない場合があります。このようなケースでも、銀行や規制当局は、最終的に誰が意思決定を行っているのかを明確にすることを求めます。
法的な所有者が明示されていない場合、金融機関などは、最も影響力を持つ人物、つまりその家族の中で最も地位が高い人物や、最も資産を保有している人物に注目します。たとえ顧客が曖昧に「リープヘル家」としか述べなかったとしても、コンプライアンスチームは具体的な個人を特定し、UBOとして報告する責任を負います。
複雑な所有構造が情報開示の免除理由になることはありません。むしろ、そのような構造であればあるほど、多くのケースにおいてより厳しい精査の対象となります。
各市場におけるUBO規制の実際:市場比較
主要な国において、UBOコンプライアンスがどのように適用されているかを見ていきましょう。
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GoGlobal株式会社 代表取締役 |
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