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専門家コラム

第126回 社会保険の適用拡大

2024-09-13 テーマ: 人事給与アウトソーシング

2024年10月から、短時間労働者の社会保険の加入要件が「従業員数51人以上」の企業に拡大されます。短時間労働者を社会保険に加入させる制度のことを一般的に「適用拡大」、対象となる事業所のことを「特定適用事業所」と呼びます。

社会保険の加入者数が増えると、それにつれて会社の社会保険料の負担が増加します。また、社会保険に加入したくない短時間労働者が、労働時間を減らすことを希望したり、退職を選択することも考えられるため、新たに特定適用事業所になる従業員数51人以上100人以下の企業は対応が必要となります。

今回は、適用拡大における短時間労働者の社会保険加入要件と、新たに社会保険の加入対象者になる短時間労働者とのコミュニケーションについてみていきます。

 

<社会保険加入の基準>

原則として、パートタイマー・アルバイトでも、会社に常用的に使用されているのであれば被保険者となります。しかし、時間や日数が少ない(受け取る給与額が少ない)方を被保険者とするのは、扶養家族の概念をなくすことにもつながります。

そのため、一定の基準以下で働く方については、社会保険に加入することができません。

具体的な基準は、「1週間の所定労働時間」および「1か月の所定労働日数」が、同じ事業所で同様の業務に従事している一般社員の4分の3以上であれば被保険者になります。

つまり、正社員と比べて労働日数と労働時間の両方が4分の3以上のパートタイマーなどは被保険者として社会保険に加入し、それ未満の場合は加入しないことになります。

 

ここでのポイントは所定労働時間「および」所定労働日数となっていることです。たとえば、正社員が週5日、1日8時間勤務の会社では、次のような働き方は被保険者となる要件を満たしません。

1)正社員と同じ週5日勤務するが、週の所定労働時間が30時間に達しない(1日5.5時間のパートタイマーなど)場合

2)1日8時間で勤務しているが、働く日は月水金の3日(週5日の4分の3未満)の場合

 

<2024年10月からの非正規社員の社会保険加入について>

原則は前述の通りですが、厚生年金保険への加入拡大を目的として、非正規社員の社会保険の適用が拡大されることになります。2024年10月からの要件は、以下の通りとなります。

1)従業員数51人以上の企業であること

2)週の所定労働時間が20時間以上あること

3)2か月を超える雇用の見込みがあること

4)賃金の月額が88千円以上であること

5)学生でないこと

 

該当する企業については、2024年10月1日付で、社会保険の加入手続き等の対応が必要となります。該当者の把握や。手続きに必要な情報の収集などを事前にすすめておく方がよいでしょう。

 

<従業員数の確認方法>

新たに適用拡大の対象となる企業となるのは、従業員数51人以上の企業です。この従業員数のカウントは、フルタイムで働く従業員数と一週間の所定労働時間および1か月の所定労働日数がフルタイムの3/4以上の従業員数を合算した人数となります。簡単に言うと、適用拡大の前の現在の厚生年金保険の被保険者数が51人以上の企業のことになります。なお、複数の適用事業所を持つ企業の場合は、すべての適用事業所の厚生年金保険の被保険者の合計人数になります。

(個人事業の場合は、個々の事業所ごとにカウントします。)

原則として、従業員数の基準を常時上回る場合が適用対象になります。常時上回る場合の基準については、厚生年金保険の被保険者の総数が12ヶ月のうち6ヶ月以上基準を超えることが見込まれる場合になります。

 

給与計算を行っていると、労働日数や出勤日数を確認する機会が多くなると思います。知らず知らずのうちに社会保険の対象者となっているというケースも考えられるので、注意しておく必要があります。

 

<社会保険の新たな対象者とのコミュニケーションについて>

社会保険の新たな対象者とは、事前に面談などを行った方がよいでしょう。面談時には、社会保険の加入メリットや、今後の労働時間などの働き方について話し合います。

 

社会保険に加入することのメリットとしては、以下の点が考えられます。

・ケガや病気で一定期間働けず会社を休んだ時に「傷病手当金」が受け取れる

・産前産後休業期間中に「出産手当金」が受け取れる

・将来受け取ることができる「年金」が増額される

 

具体的な年金額の増額イメージについては、厚生労働省の社会保険適用拡大特設サイト内でシミュレーションすることができます。

 

 

今回は、社会保険の適用拡大についてみてきました。新たに社会保険の加入対象になることにより、働き方を変えたり、退職したりする従業員が出てくことも想定されます。対象者については、なるべく早めに、しっかりとコミュニケーションを取ることが重要です。

鈴与シンワート株式会社 人事給与アウトソーシングS-PAYCIAL担当顧問
経営者の視点に立った論理的な手法に定評がある。
(有)アチーブコンサルティング代表取締役、(有)人事・労務チーフコンサル タント、社会保険労務士、中小企業福祉事業団幹事、日本経営システム学会会員。

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