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抜擢人事
[バッテキジンジ]

年功や学歴を飛び越えて人材を登用したり、比較的若い人材を高いポストに起用したりすることです。人事管理の枠組みが年功を重視したものから、成果や業績を重視したものに切り替わりつつあり、それに伴って後輩の社員が先輩を追い越して昇進・昇格することが珍しくなくなりました。

抜擢人事のケーススタディ

潜在能力を引き出す効果が期待できる<br />フェアな評価をすることが重要

日本の人事管理史上、最も知られている抜擢人事は1977年、松下電器の松下幸之助社長が後任社長に平取締役だった山下俊彦氏を指名したケースです。当時の山下氏は26人の役員序列の中でほとんど末席にあたる25番目でした。当時は異例中の異例と言われた経営トップの交代ですが、最近では類似の事例がしばしば見受けられるようになっています。

たとえば2003年、流通大手の大丸では一介の部長で役員経験のなかった山本良一氏が、序列13人抜きで社長兼COO(最高執行責任者)に就任しました。また重厚長大型企業では、クボタの幡掛大輔氏が末席に近い常務から9人抜きで社長に昇格しています。一方、政界の抜擢人事として知られるのは、第2次小泉内閣で安倍晋三氏が自民党幹事長に起用されたケース。安倍氏の当選回数はわずか3回にすぎず、これまでの党人事からは考えられないスピード昇進だったからです。石原慎太郎・東京都知事は「小泉さんは人事の天才だ」と持ち上げました。

抜擢人事の持つ最大の効果は、能力ある人材が育成されることです。そもそも抜擢された人が、そのポストに必要な能力を始めからすべて備えているかというと、必ずしもそうとは言えず、むしろ「器が人を創る」と言われるように、ポストがその人の潜在能力を引き出す場合が多いからです。また、抜擢人事で空いたポストに新たな有能な人材を登用していくことで、企業全体の人事の活性化も期待できます。

反対にデメリットとしては、社内に年功的意識が根強く残っている企業では、抜擢された社員のモチベーションが高まったとしても、その他大勢の社員のモチベーションが低下し、結果としてマイナスに作用しかねないことです。抜擢人事が社内のコンセンサスを得るには、評価がフェアであるとともに、選考プロセスをオープンにすることが重要です。

企画・編集:『日本の人事部』編集部

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