生活残業
[セイカツザンギョウ]
「生活残業」とは、生活費として残業代を稼ぐため、意図的に残業することをいいます。日本企業で長時間労働が問題となっている理由の一つは、「生活残業」を当てにする労働者が多いこと。この背景には、会社側は従業員一人ひとりがどのように働いているかを把握し切れず、従業員側は意図的に仕事の工数や働く時間を増やすことができ、さらにそれが高評価に結びついているという、日本企業ならではの根深い問題があります。
(2017/10/11掲載)
生活残業のケーススタディ
残業が月60時間に制限されると3%の減収
給与の現状維持には業務改革が求められる
会社員として、実際に「生活残業」をしたことがある人はどれくらいいるのでしょうか。2016年12月のマイナビニュース会員へのアンケートによれば、「生活残業をしたことがある」と回答した人は約4割。その理由として、「給料が安い」「生活が苦しい」「お金が必要だった」「稼ぎたい」といった声が聞かれました。多くの会社員にとって、残業をすることは、自身で給与を上げる唯一の方法となっているようです。
現在、政府が働き方改革で残業削減を進めていますが、実現したときに「生活残業」に頼っていた人はどうなってしまうのでしょうか。大和総研が2017年8月に発表した「日本経済予測」によれば、働き方改革で月の残業時間が60時間に制限されると、労働者全体で1ヵ月に3億8454万時間の残業が減る、と試算されています。年間の残業代に換算すると8兆5000億円で、雇用者全体の報酬の3%に相当。残業代が大きな収入減となっていることがわかります。
「生活残業」を当てにしていた労働者が「残業代なし」で生活水準を維持するには、基本給が上がる必要があります。そのために会社側は従業員の労働生産性を向上させ、利益を上げなければなりません。「データブック国際労働比較2017」(労働政策研究・研修機構)によると、2014年における労働生産性水準は、日本を100とすると、米国155.0、英国119.2、ドイツ112.3、フランス127.4。日本はもっとも低い水準であることがわかります。別の見方をすれば、それだけ生産性に関しては伸びしろがあるということ。日本企業が生産性向上を実現し、「生活残業」という日本企業特有の問題を解決できるのか、今後の動向が注目されます。