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専門家コラム

香港 vs. シンガポール:APAC拠点選定

2025-06-16 テーマ: 海外進出

シンガポールはIMD世界競争力ランキングで世界最も競争力のある経済にランクインしています。一方、香港は国際貿易およびビジネス法規制で世界トップの評価を受けています。

このため、アジア太平洋地域で拠点を設立しようとする国際企業の間では、この二つの都市が話題の中心になるのは当然のことです。

GoGlobalの法人マネジメント担当アソシエイトディレクター、マルコス・サルガドがよく寄せられる質問はもちろん、見落とされがちな疑問にもお答えします。

 

法人設立:迅速かつスムーズ ただし、ひとつ大きなハードルも

香港とシンガポールは、どちらも数営業日で設立可能な迅速な法人設立プロセスを提供しています。外国資本による完全所有も可能で、必要要件もほぼ同じです。

以下が、設立に必要な主な項目です。

  • 香港

ローカルディレクター 不要
コーポレートセクレタリー 必要
登記住所 必要

  • シンガポール

ローカルディレクター 必須
コーポレートセクレタリー 必要
登記住所 必要

両都市に共通する設立要件は多いものの、大きな違いは「現地ディレクター」の有無です。シンガポールでは、少なくとも1名の現地ディレクター(市民または永住者)の選任が義務付けられており、これが現地に拠点を持たない企業にとって障壁となる場合があります。ただし、多くのサービスプロバイダーがこの要件を満たす「現地ディレクターサービス」を提供しており、設立をスムーズに進める手助けをしています。

とはいえ、実際のボトルネックは設立手続きではなく「銀行口座の開設」です。シンガポールでも香港でも、法人口座の開設には数か月かかることも珍しくありません。厳格なKYC(顧客確認)、事業実体の証明、さらには対面での面談が求められることもあります。

スピーディーな立ち上げを計画している場合は、銀行手続きにかかる時間をスケジュールに織り込むことが重要です。マルコスは、事前のデューデリジェンスへの備えと、手続きに時間がかかる可能性を見越した準備を強く推奨しています。
グローバルなビジネス支援サービスを活用することで、こうしたプロセスを円滑に進めることが可能です。

 

「業種」よりも「市場アクセス」がカギ

「自社の業種がどこで伸びるか」ではなく、「顧客がどこにいるか」を軸に考えましょう。
マルコスによれば、以下のような場合には香港を検討する価値があります。

  • 中国本土との間で調達または販売を行っている
  • アジア域内での貿易ルートを構築している
  • 中国南部の製造業エコシステムを活用したい

一方で、以下のようなニーズがある場合は、シンガポールの方が魅力的かもしれません。

  • 東南アジア市場をターゲットにしている
  • テクノロジー主導のビジネスを展開している
  • 税制優遇のある知的財産(IP)構造やイノベーショングラントを活用したい

香港は貿易と物流に強みがあり、シンガポールはイノベーション、金融、地域外交に注力しています。

つまり、「どちらが優れているか」ではなく、どちらが自社の戦略に合っているかが重要です。最適な選択は、企業の具体的なニーズ・関心・目標によって異なります。

 

人材の移動:抜け道はなし、鍵は「戦略」

まず、よくある誤解を解消しましょう。香港とシンガポール間でビザの移行はできません。両都市はそれぞれ独立した入国管理制度を持っており、どちらの方向であっても一から手続きが必要です。

とはいえ、良いニュースもあります。どちらの国も基本的に国際人材の受け入れに前向きです。ただし、アプローチには違いがあります。

  • シンガポール:透明性の高いポイント制を採用。予測可能で、デジタル申請にも対応しています。
  • 香港:裁量ベースで運用されており、最低給与の規定はないものの、提出書類の充実度が重要です。

両国とも、世界中から優秀な人材を惹きつけたいと考えています。求められる書類や申請プロセスが異なるだけなのです。

 

香港 ≠ 中国本土(これは重要なポイントです)

マルコスによれば、この質問はいまだによく寄せられるとのこと。そこで、ここで明確にしておきましょう。

香港は中国の一部です。
香港法人は別途中国本土に法人を設立しなければ、中国本土で事業を行うことはできません。

主な違いは以下の通りです。

香港
法制度:コモン・ロー
現地人材の雇用:不可
直接事業運営:制限あり

中国本土
法制度:民法
現地人材の雇用:WFOE(外資独資企業)経由のみ可能
直接事業運営:現地法人の設立が必須

これらの要素を踏まえると、香港は「中国本土への玄関口」であり、「進出拠点」そのものではありません。中国との越境取引や中国市場向けの商取引には理想的ですが、たとえば深センで現地採用を行うといった「地に足のついた」事業展開には適していません。

 

GoGlobal株式会社 代表取締役
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