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専門家コラム

第33回 今年の年末調整の留意点

2016-12-12 テーマ: 人事給与アウトソーシング

いよいよ平成28年分の年末調整を行う時期が近づいてきました。今回は、今年の年末調整における留意点を、あらためて確認してみましょう。

すでに解説している項目に関しては、当コラムの掲載回を表示していますので、必要に応じて確認してください。

<通勤手当の非課税限度額について>

平成28年1月1日以降に支払われた「通勤手当の非課税限度額」が、「10万円」から「15万円」に引き上げられました。

さかのぼって法改正が適用された影響で、平成28年4月の改正前に支払われた通勤手当については、改正前の非課税限度額(上限10万円)により源泉徴収が行われているはずです。そのため、法改正により後から非課税になった部分について、源泉徴収された所得税が過納になっています。この差額を、本年の年末調整の際に精算する必要があります。

【改正後の一カ月当たりの非課税限度額】

①交通機関又は有料道路を利用している人に支給する通勤手当

1か月当たりの合理的な運賃等の額(最高限度 10万円)⇒15万円

 

②自動車や自転車などの交通用具を使用している人に支給する通勤手当

改正無し

 

③交通機関を利用している人に支給する通勤用定期乗車券

1か月当たりの合理的な運賃等の額(最高限度 10万円)⇒15万円

 

④交通機関又は有料道路を利用するほか、交通用具も使用している人に支給する通勤手当や通勤用定期乗車券

1か月当たりの合理的な運賃等の額と②の金額との合計額(最高限度 10万円)⇒15万円

 

具体的な処理方法

 年末調整の際における精算の具体的な計算と書類の記載は、次のように行います。

1.すでに改正前の非課税限度額により各月の源泉徴収をした(課税された)通勤手当のうち、改正後の非課税限度額で再計算した場合に非課税となる金額を計算し、対象となった月の金額を合計します。

2.「平成28年分給与所得・退職所得に対する源泉徴収簿」の「年末調整」欄の余白に「非課税となる通勤手当」と表示して、1.の計算根拠と今回の改正により新たに非課税となった部分の金額の合計額を記入します。

3.源泉徴収簿の「年末調整」欄の「給料・手当等1」欄には、「給料・手当等の総支給金額の合計額」から「2.の新たに非課税となった部分の合計額」を差し引いた後の金額を記入します。

 

これらの作業により、非課税限度額の改正によって新たに非課税となった部分の金額が、本年の給与総額から一括して差し引かれたことになります。3.で差し引いた後の金額をもとにして年末調整を行ってください。

 

<国外に居住する親族に係る扶養控除等の適用について>

前回の「第32回コラム」で詳しく説明していますので、参照ください。

 

<年末調整関係書類に係るマイナンバーの記載を不要とする見直しについて>

前々回「第31回コラム」で詳しく説明していますので、参照ください。

 

<復興特別所得税の計算について>

所得税の源泉徴収義務者は、平成25年1月1日から平成49年12月31日までの間に生じる所得について、源泉所得税を徴収する際に「復興特別所得税」をあわせて徴収し、源泉所得税の法定納期限までに、その復興特別所得税と源泉所得税をまとめて国に納付するルールになっています。

このため、昨年同様、年末調整で年税額を計算する際にも、最後に復興特別所得税を加算して年税額を算出する必要があります。

 

年調年税額の計算方法

復興特別所得税を含めた年調年税額は、算出所得税額から(特定増改築等)住宅借入金等特別控除額を控除した後の税額(年調所得税額)に102.1%を乗じて算出します。最終的に計算した結果で、100円未満の端数があった場合は切り捨てますので、年調年税額は百円単位になります。

今回の年末調整は、マイナンバーの導入開始等これまでの年末調整業務になかった業務が加わるため、例年より負荷がかかることが予想されます。

給与ソフト等を利用して年末調整を行う場合には、今回取り上げた通勤費の非課税限度額の改正による調整方法がソフトごとに異なります。

しっかりとした対応ができるように、今から操作方法や計算方法を確認し、計算ミスが起きないようにしていただければ幸いです。

 

 

鈴与シンワート株式会社 人事給与アウトソーシングS-PAYCIAL担当顧問
経営者の視点に立った論理的な手法に定評がある。
(有)アチーブコンサルティング代表取締役、(有)人事・労務チーフコンサル タント、社会保険労務士、中小企業福祉事業団幹事、日本経営システム学会会員。

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